京都・妙心寺の退蔵院で絵師となった村林由貴さんの襖絵が、11年という期間を経て、5月に完成しました。
彼女については、ぼく自身プロジェクト開始当時から取材をしてきて、複数の雑誌に経過を書かせてもらいつつ、ずっとそばで見させてもらってきました。
寺に住み込み、一から水墨画を学びながら、厳しい禅の修行にも身を投じ、ただ、襖絵を完成させることだけに全てをかけた11年。
彼女は本当にストイックで、一時は修行僧のように張り詰め、心身ともに限界となり、寺からも絵からも離れなければならない時期もありました。しかし、そうした困難も自らの糧にしながら、水墨や禅を自らのものにして、村林さんは76面の襖絵を描き上げました。
退蔵院の門を叩いたのは24歳の時で、絵が完成したとき彼女は35歳になっていました。僕が村林さんの取材を始めたとき、現在の彼女よりも若かったことに、11年という時間のすごみを感じます。
立ち上がった絵を見たとき、僕自身も、言葉にならない気持ちになりました。その一筆一筆に込められた魂と熱量に、心を揺さぶられました。
その絵が、年末年始に一般公開になります。是非是非この機会に、多くの人に見ていただきたいです。
これだけの時間をかけて一つの作品を生み出すというのはどういう気持ちなんだろう。何度も彼女に直接聞いているものの、やはり彼女自身にしかわからないことのように思います。
自分にわかること、言葉にできることは限られているけれど、でも、自分なりの感動や思い入れ、村林さんに対する尊敬の念を、なんとか僕も一冊の本として世に問うべく、いま苦闘しています。
プロジェクトの概要については、2年前、「文藝春秋」2020年6月号に書いた拙稿をごらんいただければ。(途中まで下のリンクから読めます)
https://bungeishunju.com/n/n0f7362aa2e7c
村林さんが、文字通り人生を削って描き上げた魂の襖絵を、多くの方に見ていただけますように!