読売新聞書評欄「ひらづみ!」『物理学者のすごい思考法』(橋本幸士著、集英社 インターナショナル新書)

読売新聞月曜夕刊 本よみうり堂 の「ひらづみ!」欄の書評コラム、担当3回目は、京都大学の理論物理学者・橋本幸士さんの『物理学者のすごい思考法』を紹介しました。もともと物理学者になりたかった自分としては、物理学者はどこか親近感があったり、気になる存在だったりします。橋本さんが自らの頭の中を開陳する本書を読んで、もし自分が物理学者になっていたら、、などと夢想しました。また、最近「年を取ることは重力の存在に気付くことだ」なあとよく感じていて、その話を盛り込めたのも自分としては嬉しかったり。

気軽にさらさらと読める一冊です。ご興味ある方は是非。

中央公論11月号「新刊この一冊」『「役に立たない」科学が役に立つ』

10月10日発売の中央公論11月号に、『「役に立たない」科学が役に立つ』(東京大学出版会)の書評を書きました。プリンストン高等研究所初代所長と現所長によるエッセイ集で、自由に研究することの重要性を説く一冊です。
書評記事がYahooニュースに掲載されていました(11月2日追記)

「有用性」や「有益さ」に捉われず自由に研究することがいかに大切かを訴える初代所長エイブラハム・フレクスナーの80年以上前の言葉は心を打ちます。

とりわけ心に残ったのは、結果的に大きな成果をあげられるから自由に研究するのが重要だ、というのではなく、<精神と知性の自由のもとで行われた研究活動は、音楽や芸術と同様に、人間の魂を解放し満足をもたらすという点だけで、十分に正当化されるべきなのだ>のように書かれている点です。フレクスナーの、学問への深い敬意が滲み出ています。

奇しくも日本学術会議の会員任命拒否問題によって、学問の自由にも危機を感じざるを得なくなってしまいつつありますが、だからこそ、いま広く読まれたい本です。

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12月22日の毎日新聞書評面「昨日読んだ文庫」に、『宇宙創成』(サイモン・シン、新潮文庫)について書きました。

12月22日の毎日新聞書評面「昨日読んだ文庫」欄に、『宇宙創成』(サイモン・シン、新潮文庫)について書きました。ビッグバン理論の誕生を巡る科学の歴史と人間ドラマ。来年は、この延長戦上にあるテーマのノンフィクションを書き始めたく、最近はその準備を進めています。

久々に宇宙論や物理学を自分なりに学んでみると、その壮大さに圧倒され、いろんなことが気になってきます。最近では、イタリアの理論物理学者であるカルロ・ロヴェッリの『時間は存在しない』『すごい物理学講義』というのを立て続けに読んでいて、両方ともとても面白かったです(後者はまだ途中ですが)。物理学を構築してきた先人たちへの深い敬意と、宇宙やこの世界を形成する根本原理への畏敬の念みたいなものがあふれていて、かつ文章が詩的で、その姿勢に惹かれます。

大学1年のとき、物理学を真剣にやりたいと思いつつも、相対論や量子論の講義が全く理解できなくて割とすぐにあきらめてしまったのですが、いま改めてしっかりと色々読んでみると、真面目にやればきっともっと理解できたような気がして、もったいなかったなあと感じます。でも、まあ当時、すぐにあきらめたというのは、結局そのくらいの気持ちしかなかったんだろうなとも思います。

その中途半端に終わった物理学への思いを、今後ノンフィクションという形で、自分なりに完全燃焼させたいと思っています。完成まで何年かかるかわからないけれど…。

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ウェブ「考える人」に科学の本10冊を紹介するエッセイ、京都新聞夕刊に「旅へのいざない」北朝鮮。

☆ウェブ考える人のリレー書評「たいせつな本」に、科学の本10冊を紹介するエッセイを書きました。
https://kangaeruhito.jp/article/10264


紹介したのは、以下の10冊。
立花隆『宇宙からの帰還
コペルニクス『天体の回転について
ガリレオ『天文対話
トーマス・クーン『科学革命の構造
森田真生『数学する身体
福岡伸一『できそこないの男たち
チェリー・ガラード『世界最悪の旅
スティーヴン・ホーキング『ホーキング、宇宙を語る
幸村誠『プラネテス』(全4巻)
サイモン・シン『フェルマーの最終定理

自分の次のテーマを探りつつ、再読したり新たに読んだり。宇宙、物理、数学、科学史などのノンフィクションに漫画も。どれかを手にとりたくなってもらえますように。

☆京都新聞夕刊連載「旅へのいざない」第6回は北朝鮮(10月3日掲載)。よくあんな無茶な方法で国境の橋を渡れたものだと、当時の無知、無謀さに我ながら驚く。しかしそれが若さが持つ力でもあるはずで、当時の自分が羨ましくもあります。

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物理学をテーマに

物理学の歴史をテーマにしたノンフィクションを書きたいという気持ちがだんだんと固まりつつある中で『ホーキング、宇宙を語る』を読んでます。もう古典のような本で、30年くらい前に確か途中で挫折して以来の再読なのですが、なんとなくしか理解できてなかった事柄がすごい的確でシンプルな比喩で説明されてて感動してます。

学生時代、一度ホーキング博士が大学に講演に来たことがあり、その時、一枚のパワポの中央に確か、りんご一つだけが描かれた図がありました。どういうことだろうと思ったら、機械を使った音声による彼の説明の後に、そのリンゴだけの図が見事にその説明の全てを物語っていることを知って感動した記憶が今も残っているのですが、この本もまた、そのような魅力に満ちています。彼のような天才的な人物が、わかりやすい言葉で伝える力も備えているというのは、本当に稀有でありがたいことのように、読んでて思えます。

吃音というテーマをひとまず書き終えたいま、次の数年間、場合によっては40代のかなりの時間を費やすことになるだろう次作のテーマを何にすべきなのかとしばらく考えてきたのですが、やはり自分はサイエンス、特に物理にまつわる人間ドラマが書きたいという気持ちが強まっています。サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』のような作品が長年の憧れなのですが、あの本のような絶大な魅力と深みを持つ本を目指すとき自分はどんなテーマを選ぶべきなのか。ずっと考え続けている中、ぼんやりとながら、テーマが具体的になってきているのですが、果たして書いていけるのか…。
この本を読みながらも、そんなことを考え続けています。

先月受賞作の発表があった新潮ドキュメント賞も、講談社のに続いて残念ながら落選。しかも結果の連絡が来るという日の朝に、まだ新しいスマホが突然壊れるという不吉なアクシデントにも見舞われて、結果もそれに追随するような感じでアウト。キャンプ中だった中、それから1日ぐらいテントの内外でがっくり来てましたが、今となっては、その残念な思いが次作へのエネルギーになった気も。

これから、力を尽くして取り組みたいです。

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