今年も「旅と生き方」に関する講義を終えて(レポートを読んで思ったこと等)。

毎年前期に大谷大学で行っている、旅と生きることをテーマにした講義(人間学)も、今年でたぶん13年目くらいになりました。今年もようやく、レポートの採点、成績入力までを終了しました。

この講義は、旅が人生にどう影響するかということを、自分の長旅の経験や、様々な映像作品、世界情勢、歴史、文化などから語っていく内容で、毎年100人~200人くらいが受けてくれます。(講義の基本的な内容はこちらに書いています)

講義を受けて、少なからず影響を受けてくれる学生が毎年何人かはいるように感じます。ある年は、講義が終わったあとに休学してユーラシア横断の旅に出てくれた学生もいたし、行くかどうしようか迷っていた留学を、行くことに決めたと伝えてくれた学生もいました。またその他に、進路の相談や留学の相談をしに来てくれた複数の学生も含め、彼らの姿を見て、旅について考えることは、学生たちにとって大きな意味があるように感じています。

そのような中、今年度の講義のレポートを読み終えて、今年はとりわけ、いろんなことを感じてくれた学生が多かったかもしれないように思いました。

ある学生は、全然大学に行けてなかった中、たまたまこの講義をとって聴いていくうちに、いろんな生き方があっていいんだと思うようになり、背中を押され、そのうちに他の授業にも出られるようになったと書いていました。

またある学生は、姉が高校卒業後に海外の大学に進学し、そのままその国で就職して現在に至るとのことでした。その学生は、姉がどうしてそんな選択をしたのかがわからず、かつ、遠くに行ってしまったことがショックだったこともあり、姉の出国以来、かれこれ5年ほどほとんど連絡しないままだったとのこと。しかし、この講義を受けて彼女は、姉がどうして海外に行くという選択をしたのかがわかったような気がした。そして、姉にちゃんと連絡をしてみることに決めましたと書いてくれていました。

また、最近難病であることがわかったという学生は、これからどうやって生きていこうか途方に暮れる気持ちだったけれど、世界にはいろんな生き方をしている人し、いろんな生き方をしていいんだということを講義を通じて感じ、自分も自分の道を生きていけるような気がするようになった、と記してくれていました。

他にも多くの学生が、内面の深いところの変化について書いてくれました。僕の講義がまだ途中の段階で旅に出かけたくなってバイクの旅に出たという学生もいたし、夏休みに旅に出ることにしましたと書いている学生も複数いました。そして旅というテーマを通じて自分自身のこれからの生き方を真摯に考えていることが伝わってくるレポートがいくつもありました。

そんなみんなのレポートを読んで、僕自身がとても励まされました。この講義を12,3年やりながらも、なぜかいまも毎回毎回、緊張してしまうのだけれど(それは自分の性格ゆえ)、そんな緊張感を抱えつつも講義をやってきてよかったなと思いました。

一方、こんな講義をしながらも、じつは自分がいま全然旅をしていません。2020年の初頭にタイに行った直後にコロナ禍が始まったこともあり、以来海外が遠くなり、精神面や生活面でも思うようにいかないことが多くあり、気づいたらパスポートも切れてしまっていました。

そのように旅がすっかりと遠のいてしまった自分ですが、みんなのレポートを読んで、皆が旅の可能性を強く感じてくれたのを知って、自分自身もまた、短くてもいいから近いうちに旅がしたいと、いまとても強く思っています。

皆が講義に興味を持ってくれたことで、逆に自分自身がいま、旅の可能性を改めて強く感じています。

講義を聴いてくれた皆さんのこれからの人生を、陰ながら応援しています。「偶然性」と「有限性」を心に留め、そして「脱システム」を――。