長らく積読だった『責任 ラバウルの将軍 今村均』を、先日思い出して読み出したら想像以上に面白い。その中に、自分は全く初耳の驚愕の事件についての記述があって驚かされました。太平洋のオーシャン島(現キリバスのバナバ島)で終戦直後に起きた日本軍による島民200人の殺害事件。
本書では、殺害を行った元日本兵が率直にその背景を語っています。
この島を日本が占領した時、島民2500人のうち屈強な男性200人だけを残してあとは他の島に移住させた。その200人には武器を与えて訓練し、良好な関係を結んできたのに、1945年8月、終戦の4,5日後に全員を銃殺したのだと。理由は、占領当時に島にいた宣教師など数人の白人を処刑したことが発覚するのを恐れたためというのです。
白人の処刑については200人の誰もが知っていたとのこと。だから、敗戦となって連合国軍が島にやって来た時にとても隠し通せないだろうから、全員殺してしまったのだと…。島民の殺害についてはその後ラバウルでの戦犯裁判で明らかになり、8人の日本兵が処刑されたけれど、白人殺害を隠すための集団殺害だったというのは裁判でも隠されたまま、資料にも一切残ってないようでした。
実際このオーシャン島の島民殺害事件についてはその後も全然知られていないのではないかと思って、調べたら、1年前の東京新聞にこんな記事がありました。
最後の指揮官命令は島民の虐殺だった…元日本兵が書き残した敗戦直後のオーシャン島で起きたこと
いまなお、やはり全然知られてない事件なのだなと改めて驚かされました。
角田房子著『責任 ラバウルの将軍 今村均』は1985年ごろに刊行されていて、当時、関係者の多くが存命で、こういう話を当事者に取材で直接聞いています。この島民殺害事件を語った元日本兵も当時まだ60代。生々しさがすごいです。また、今村均の人格者ぶりもとてもリアルに描かれてて説得力があります。ラバウルの戦犯裁判のいい加減さ、無実の罪で処刑された日本兵がかなりの数いたのだろうことも伝わってきます。
もっと広く知られるべき内容が多々あり(自分が知らないだけかもですが)、本としてもすごく面白いです。